目の中に平行に入ってきた光は角膜と水晶体で屈折して網膜上で焦点を結び、視神経を介して脳へ信号が送られ、物が見えるようになっています。 近視とは、目の中に入った光が網膜より手前に焦点を結んでいる状態で、近くは見えても遠くが見えにくいのが特徴です。角膜や水晶体の屈折力が強すぎるために起こる屈折性近視と、眼軸長という目の奥行きが長いために起こる軸性近視があります。メガネやコンタクトレンズは、網膜に焦点が合うように光の屈折を変化させることで視力を矯正しています。
ライフスタイルの変化にともなって世界中で子どもの近視が増加しており、小学生の約4割、中学生の約6割、高校生の約7割が裸眼視力1.0未満と報告されています。近視は学校での勉強やスポーツなどに不便が出るだけではなく、将来の目の健康に影響を及ぼす可能性もあります。
近視度数と目の疾患のオッズ比 | |||
近視度数 | 白内障 | 緑内障 | 網膜剥離 |
弱度近視 −0.50 〜 −3.00D (SE) | 2 | 2 | 3 |
中等度近視 −3.00 〜 −6.00D (SE) | 2 | 3 | 9 |
強度近視 −6.00D以上(SE) | 3 | 3 | 13 |
Haarman AEG. Et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci., 61, 49 (2020)より
SE:等価球面度数< br>
オッズ比:ある因子が病気の発症に関連する程度のこと。数字が大きいほど関連性が強い。ただし、オッズ比はその因子が何倍病気になりやすいという意味するものではありません。
子どもの近視は、眼軸が伸びてしまうことが主な原因である軸性近視がほとんどです。眼球は体が成長する時期に伸びることが多く、低年齢の頃に早く伸びる可能性があります。一度伸びた眼軸は元に戻せないため、小児期に眼軸長の伸びを抑えることが近視の進行を抑制することに繋がります。
当院では、近視の進行抑制治療として、定期的に眼軸長を測定しながら低濃度アトロピン点眼治療・オルソケラトロジー・レッドライト治療を行っています。どの治療も近視を進みにくくすることを目的とするものであり、近視を治して裸眼視力を回復させる治療というものではありません。お子さまの「見える」を守るために、視力が気になったら眼科を受診して検査を受けましょう。近視の進行抑制治療は保険診療の適用外となるため、自由診療(自費)となります。
リジュセアミニ点眼液0.025%は、アトロピン硫酸塩水和物を0.025%含有する点眼剤です。最新の研究により、低濃度のアトロピンには眼軸の伸びを抑える効果があることがわかっており、近視の進行を抑制する効果が期待できます。毎日1回就寝前に点眼し、近視の進行が安定する10代後半まで治療を続けることが望ましいです。点眼期間中および中止後は、定期的に眼科を受診して検査(屈折検査、眼軸長の測定など)を受けてください。
本治療は自費診療となるため、保険診療は適応されません。
全て税込表示です。
開始時費用 | 2,750円 | |
リジュセアミニ点眼液0.025% | 4,070円 | 1箱30本入り |
検査・診察料 | 1,100円 | 3か月ごとに自費診療にて |
オルソケラトロジーは寝る直前に装用するハードコンタクトレンズです。レンズ内面の特殊な4段階カーブのデザインによって睡眠中に角膜の形状が平坦に変化します。朝、起床時にレンズを外した後も寝ている間に矯正された角膜形状は日中維持されるため、メガネやコンタクトレンズを装用せず裸眼で過ごすことができます。軽度から中等度の近視の方に有効です。特に、通常のコンタクトレンズの管理がまだ上手くできないお子さんや、年齢制限のために近視矯正手術を受けることができない若い方は、大人に比べて角膜がやわらかいと言われているので、この矯正方法は効果的です。
装用開始直後は矯正効果は持続しにくいですが、くり返し装用することで角膜形状が安定し、レンズを外した後も矯正効果を維持できる時間が増えるようになります。装用開始後1週間までに半数以上の方が裸眼視力1.0以上に矯正され、さらに開始から1か月後になると7割以上の方が1.0以上に矯正されています。個人差もありますが、1週間ぐらいで効果のわかる安全な治療方法です。
レンズの装用を中止すると一般的に1か月程度で角膜の形状が元の状態に戻り、他の矯正方法へ変更することもできます。万が一合わないと感じても、いつでも中断できるので安心です。
普通のコンタクトレンズや眼鏡で近視を矯正した場合、網膜の中心には焦点が合っていても周辺の網膜像は遠視気味に焦点がズレており、この周辺の焦点のズレが眼軸を伸ばす原因になると言われています。オルソケラトロジーで矯正した場合は、この周辺網膜の焦点のズレが起こりにくいため近視の進行を抑制する効果があると報告されています。また、低濃度アトロピン治療との併用により近視進行抑制効果がより強くなることも報告されています。
本治療は自費診療となるため、保険診療は適応されません。
全て税込表示です。
治療費 | 両眼 165,000円 片眼 82,500円 |
レンズ代、スタートから3か月までの検査料、診察料、目薬代、1か月分のケア用品を含む |
検査・診察料 | 3,300円 | 3か月ごとに自費診療にて |
レッドライト治療は、オーストラリアのEyerising International社が製造するデバイス Eyerising (アイライジング) 近視治療用機器を使用する、近視進行を抑制する治療です。
赤色の波長(一般的に波長約630~700nm)の光を目に照射し、眼底の血流を促進して代謝をあげることで、眼軸長の伸びを緩やかにし、近視の進行を抑制することができます。
当院から貸し出すデバイスを自宅にてWi-Fi接続し、1回3分、1日2回、週に5日間行います。1日の治療間隔は4時間以上空ける必要があり、規定の照射時間、回数を超える使用はできません。照射後に治療後に一時的にまぶしさ、閃光盲、残像が生じることがありますが、痛みを伴わないとても手軽な治療方法です。
Eyerising近視治療用機器が近視進行抑制に有効であることが海外での臨床試験で証明されており、治療スケジュールの遵守率が高かった症例では近視の進行を87.7%の抑制効果を示したことが報告されています。健常な網膜であれば障害を起こさない領域のエネルギーであるため、眼球へ直接照射しても安全です。日本国内では未承認の医療機器ですが、ヨーロッパのCEマーク、オーストラリアのTGA、ニュージーランドのMedsafe、イギリスのMHRAなど、すでに30カ国以上の医療規制当局 (日本の厚生労働省にあたる機関) が要求する品質、安全性、有効性の基準を満たしており、さらにその他の地域においても認可が広がってきています。
デバイスの使用方法については以下のリンク先の動画をご確認ください。*音が出ます
https://www.eyelens.jp/media/eyerising/eyerising-guide-device.mp4
本治療は自費診療となるため、保険診療は適応されません。
全て税込表示です。
初年度 | ||
適応検査費 | 11,000円 | 検査内容:視力、OCT、眼軸長、スリットなど |
開始時費用 | 154,000円 | デバイスレンタル代 |
定期検査費 | 5,500円 | 治療開始1、3、6、9、12か月後検査の1来院ごとの検査費 |
サブスクリプション費 | 8,250円 | メーカへ直接クレジットカード払い (JCBは不可) にてお支払い デバイスの毎月の使用状況を確認するために毎月必要な費用 |
2年目以降 | ||
定期検査費 | 6,600円 | 1来院ごとの検査費 |
サブスクリプション費 | 8,250円 | デバイスの毎月の使用状況を確認するために毎月必要な費用 |